本館の沿革
理念とビジョン
国立歴史博物館(以下、本館と略称)は、一九五五年に創設され、半世紀にわたる運営を経る中で、絶えず革新と変化を求め、自らを高めてまいりました。今日、本館は長年にわたる芸術文物面でのコレクション、教育の推進、学術研究と展示イベントの企画などの面で大きな成就をおさめ、各界からの賞賛と評価を集めております。これらの豊で着実な成果は、社会への還元を図るとともに、私たちの新たな局面を切り開き、永続的な発展を遂げる上での原動力となっています。
理念とビジョン
本館は、当時の教育部長・張其昀先生が文物の収蔵と研究の基礎となり、歴史・文化を発揚し、教育機能を備えた「文物美術館」の設立を構想したことに基き、中央政府が台北に遷都した後にはじめて開設した公共博物館として誕生しました。設立当初、本館は「民族精神教育の強化、国民心理建設の促進」のモットーを掲げ、「本国の歴史に関する文物、美術品の収集、展示および関係業務の研究などの事項」を職責としてきました。
本館は成立後、文物コレクションの展示を経営理念の核心とする一方で、学術研究、歴史芸術教育、文化サービスと知識構築などの各方面で大きな成果を上げており、国内の博物館学および博物館事業の競争と発展を促しています。今日、本館は文物の収集、コレクション、展示、研究の方向から、文物知識を核心とした教育学習への応用、さらに研究の交流を基礎に、文化サービスを提供する専門博物館へと発展を遂げています。文物を統合整理し、文化の価値および多元的な方向の創造を運営目標に掲げ、、社会的環境の激変、および皆様の本館に対する期待に応えてゆく所存です。
デジタル化時代を迎え、本館は「電子博物館」の運営概念を打ち出し、デジタルコレクションを率先して応用する方向にあり、文物知識の交流、ネット電子グループの重視、斬新な博物館の運営モデルの提出などを実践しています。そして、現在から未来にかけてインテリジェンス、コンテンツ経営などの重大な理念については、文物知識と映像を核心に構築したデジタルコレクションおよび高付加価値の応用計画を引き続き推進し、世界の各博物館と結ばれた新しい世紀に向けてまい進してまいります。
創設と開拓
本館は開館当初、「文物美術館」の名を冠していました。しかし政府から交付された文物が到着していなかったことや、本館自身に文物を購入する経費がなかったことから、初期は展示物の多くが模型あるいは複製品で、一部では「真空館」と揶揄されるほどでした。
一九五六年の春、教育部は正式にかつて河南省立博物館に託していた「国立故宮中央博物館連合管理処」に代って台湾に運び込んだ三十八箱の文物、および日本が中国侵略戦争の時期にわが国から奪った文物五十一箱を「文物美術館」コレクションとして交付することを決定、これによって「文物美術館」はようやく自身のコレクションを擁するようになりました。この後、政府機関および社会の識者らより絶え間なく文物の寄贈を受けるようになり、現在本館が所蔵する文物は5万余点で、河南博物院の銅器や唐三彩などを基礎に、日本が戦後に返還した文物で政府機関から交付を受けたもの、毎年の予算で購入したもの、および公的機関あるいは個人から寄贈された物が中心です。包括する範囲は中国大陸の文物、台湾の文物、台湾原住民の文物および外国の文物など豊かな多面性を備えており、年代も石器時代から商・周・唐・宋・元・明・清の各王朝から近現代のものに及びます。
政府遷都後の博物館事業を開拓
本館は、中華民国中央政府が台北に遷都した後に成立した初めての公的な博物館で、台湾の博物館事業において特殊な地位を占めていることは言うまでもありません。開館以来、歴代館長のもと国際的な展示スペースの獲得に向けた努力が続けられ、わが国の博物館事業におけるチャンスと発展を生み出してきました。 対外的には、各国の博物館同士の文化交流イベントに参与し、対内的には、博物館の専門人材を育成してきました。また、全国的な博物館組織を再開することによって、わが国の博物館事業の発展を振興させようとしています。一九六四年、「中国博物館学会」が成立し、その宗旨を「博物館学術の研究、博物館事業に促進、博物館の教育機能の発揮、わが国のすぐれた伝統文化の発揚、国際文化交流の促進」と定めました。そして、本館初代館長の包遵彭先生を常務理事に、第二代館長の王宇清先生を秘書長にそれぞれ選出したことからも、本館が台湾博物館事業の推進と発展に果たした貢献の大きさを見て取ることができます。
成長と形態転換
一九六〇年代の創設と開拓を経て、本館は国内の博物館の風気を先取りするのみならず、わが国の歴史文化、芸術教育、および博物館事業の経営をリードし、新たな里程標を打ち立てました。一九七〇年代から八〇年代の国立歴史博物館は、絶え間ない成長を重ねてより規模を拡大する一方、九〇年代に入って社会の多元化と時代の変遷に適応すべく、形態転換と調整を進めました。
伝統文化を発揚し、台湾本土を思いやる
一九七〇、八○年代の台湾は、内外の環境が急激に転換する歴史的な段階を迎えていました。政治面には、台湾海峡両岸の対立が続いており、中共は大陸内部で文化大革命を実施すると同時に、、対外的にはわが国の国際社会における生存空間を圧迫していました。経済面では、わが国の政府による時宜を得た政策と国民の努力があいまって、着実な上昇を見せていました。文化面では、中華伝統文化の復興から、次第に台湾本土意識へと広がりを見せるようになり、文化建設の力と実際的な運動の風潮がともに発展を見た時期でもあります。
本館はまさにこの時期、実力の蓄積と前進の精神に則り、より新たなものを追求しすることで数々の成果を上げることに成功しました。国内のすべての現代アートの大作は、いずれも本館で展示されました。芸術界の精華を集めたそれは、まさに台湾近代芸術発展史の縮図でもあります。
国際交流と地方文物特別展
国際交流を促進し、わが国の伝統文化を発揚するため、本館では民間の資源を統合し、文化や芸術に関する国際交流展を企画し、政府の文化外交事務に多大の貢献を果たしています。例えば、「黄金の印象-オルセー美術館の名作特別展」、「文明の曙光-メソポタミア古文物特別展、マヤ-ジャングルの謎」、「インド古代文明」、「農村の風情—ミレー、コローとバルビゾン派」、「スペイン玩具特別展」などのテーマ式の国際交流展が行われました。
このほかに、本館では台湾本土の芸術文化の推進にも力を注いでおり、台湾各地の博物館の特色あるコレクションを、計画的に国家画廊でシリーズ展示したところ、たいへんな好評を博しました。このほかに、本館では国家の文化政策に歩調を合わせ、地域文化のバランスを図るため、頻繁に台湾各地のカルチャーセンターで本館所蔵品の巡回展示を行っています。今日では、文物巡回展示専用車を購入し、「移動博物館」の運営にも手がけています。
台湾海峡両岸の文化交流を促進
一九八七年に政府が中国大陸への親族訪問を解禁した後、台湾海峡両岸人民の文化教育、旅行、経済貿易、投資など各方面における接触は日増しに拡大しおており、文化交流もますます頻繁になっています。この時期、本館は台湾海峡両岸の文化交流の良好な発展と優位性を確保するため、数多くの両岸協力による特別展を企画してまいりました。例えば、「李可染書画展」、「兵馬俑特別展」、「敦煌芸術大展」、「雷峰塔秘宝と白蛇伝奇展」などです。これらは、台湾海峡両岸の文化交流のなかで得がたいきっかけとなったほか、当時の学者にとって研究と取材での重要な参考資料となりました。
学術研究の奨励、教育サービスの推進
本館は、学術研究と教育推進での重責を担っており、歴代館長も館内における学術研究の気風を奨励してきました。歴史は即ち文化、文化は即ち生活、生活は即ち民俗の理念に則り、本館は一九八八年に「民俗研究委員会」の成立を計画、研究、収蔵と館内事務、出版をそれぞれ結合させることで大きな研究成果を上げました。
学術研究の基礎を深化させた後、本館は教育サービスの推進で応用すべく、一九九二年に「教育推進プロジェクト委員会」を成立させ、社会資源を結合し、幅広い推進の効果を上げました。その任務と機能には、各種展示における視聴覚教育推進のイベントおよび宣伝業務を強化、各レベルの学校と緊密に連携し、学校教育の不足を補充、博物館の文化ショップのサービス強化、「博物館ボランティア制度」の確立、および「博物館の友」の運営画含まれ、博物館が社会に対する教化機能をさらに発揚させることが期待されています。
将来の展望
時代が急速に変化を遂げるなか、本館に求められる機能と取り巻く環境も大きく変化しており、今後は以下の四つの方向に向けた発展を目指しております。
一、台湾の都心における多元的な歴史文化センターのイメージを構築。
二、 人文と自然が共生できる快適な学習とレジャーの環境を作り出す。
三、 島国の活力を発揮し、台湾本土と国際的な視野を強化する。
四、文物の核心的な価値を大切にし、人類のインスピレーションを啓発することで研究と創造を奨励する。
上述ビジョンを実現すべく、本館としては全力を尽くして、以下の項目について実現してまいります。
一、台湾と中国大陸、および世界の分量比重のバランスを計り、人類文化の多元的な価値を把握し、収蔵品を増加させ、台湾の史観を強化するとともに、国際的な関係を深め、相互学習の理念を実現させる。
二、専門性に基き、フレキシブルな思考を奨励し、自省と社会のニーズを各種のTPO、レベルや対象に適合させて効果と価値を高度に発揮させる。
三、人文と自然の共生の理念に基き、環境と空間を活用し、ハード設施の強化を図ることで、快適な学習と優れたレジャーの環境を提供してゆく。
四、資源を分かち合う理念のもと、異なる業種と社会の資源を結びつけ、情報科学技術と各種の解釈ツールを通じて、文物の活性化、創意開発の奨励、付加価値の創造、時流のリードを目指してゆく。
熱意、実務主義、専門性、サービス、分かち合い、創意開発が、事務処理に当たっての態度であり、核心的な価値です。国際的な視野を備えた国家レベルの精緻で多元的な博物館を打ち立ててゆくことこそが、私たちが努力する方向であり目標でもあります。皆様のさらなるご理解をご支援をお願い申し上げます。